怪我予防 2026-09-18
ボート部の肋骨疲労骨折を予防する方法|原因と練習中の対策
大学ボート部(漕艇部)の練習を続けていると、脇腹から背中にかけての鈍い痛みや、深呼吸・くしゃみをしたときにズキッとする痛みを感じたことがある部員は少なくないはずです。その正体のひとつが「肋骨の疲労骨折」です。転倒などの外傷がないのに骨にひびが入る疲労骨折は、繰り返しの動作が多いボート競技で特に注意したい怪我のひとつとされています。本記事では、なぜボート部で肋骨の疲労骨折が起こりやすいのか、練習の中でできる予防のポイント、痛みが出たときの対応までを整理します。
ボート部で肋骨の疲労骨折が起こりやすい理由
ローイング動作の繰り返しが肋骨に負荷をかける
疲労骨折は、一度に大きな力が加わって骨折する外傷性の骨折とは異なり、同じ部位に軽い負荷が繰り返しかかり続けることで、骨に微細な損傷が蓄積して起こります。ボート競技はキャッチからフィニッシュまでの一連の動作を何百回、何千回と繰り返すスポーツであり、パドリング(漕ぐ)動作の反復が肋骨に持続的な負荷をかけやすい競技のひとつだと整形外科の情報サイトでも紹介されています。フォームに左右差や無理な力みがある場合、特定の肋骨に負荷が集中しやすくなる点にも注意が必要です。
合宿や追い込み時期の練習量の急増
疲労骨折のリスクを高める要因として繰り返し指摘されているのが、練習量やトレーニング強度を急激に引き上げることです。長期休暇中の合宿や、大会前の追い込み時期に一気に乗艇時間やエルゴの負荷を増やすと、骨や周辺組織がその変化に追いつけず、疲労骨折のリスクが高まりやすくなります。全日本大学ローイング選手権(インカレ)に向けた最終調整期はその典型で、直近の大会結果を見ても各校が大会直前まで艇速を追い込んでいる様子がうかがえます(2025年度の結果)。骨や腱・靭帯といった組織は、心肺機能や筋力に比べて負荷への適応に時間がかかりやすいとされており、「追い込みたい時期ほど段階を踏む」意識が予防の土台になります。
肋骨疲労骨折のサインを見逃さない
肋骨疲労骨折の主な症状として紹介されているのは、運動時や呼吸時の脇腹・背中の痛み、患部を押したときの圧痛、深呼吸やくしゃみをしたときに痛みが強まるといった点です。最初は漕いでいるときだけ気になる程度でも、練習を続けるうちに日常の呼吸でも痛むようになるケースがあります。「筋肉痛だろう」と自己判断で練習を続けてしまうと悪化しやすいため、同じ場所の痛みが数日以上続く場合は、早めに整形外科やスポーツクリニックを受診することが勧められています。
練習の中でできる予防のポイント
フォーム・練習条件を見直す
海外のローイング専門メディアでは、肋骨への負荷を高めやすい練習条件として、低いケイデンス(ストロークレート)での長時間の定常漕、向かい風や逆流の中での長時間の漕艇、エルゴメーターのダンパー設定を重くしたまま低いストロークレートで漕ぐ練習などが挙げられています。こうした条件が続くと、フィニッシュ側で肋骨や周辺の筋肉に負荷が集中しやすくなるためです。練習メニューを組む際は、こうした負荷が特定の部員・特定の期間に偏りすぎていないかをコーチ・主将が確認することも予防につながります。
体幹まわりを強化するエクササイズ
肋骨疲労骨折の予防エクササイズとして、肩甲骨を安定させる筋肉(前鋸筋・外腹斜筋など)を鍛える種目が海外のローイング専門メディアで紹介されています。代表的なものとして、胸を丸めるように押し込む腕立て伏せのバリエーション(プッシュアッププラス)、腕を伸ばした状態で重りを押し上げて数秒キープする種目、段差の昇り降りで肩甲骨の安定性を高める種目などがあります。エルゴや乗艇のメニューだけでなく、陸上トレーニングにこうした体幹・肩甲骨まわりの種目を組み込むことが、負荷を分散させる考え方として紹介されています。
軽量級(ライトウェイト)の部員が特に注意したいこと
ローイング競技を対象とした海外の医学文献では、肋骨疲労骨折はさまざまな要因が重なって起こる「多因子性」の怪我とされたうえで、軽量級(ライトウェイト)の選手はリスクが高い集団のひとつとして紹介されています。背景として指摘されているのが、減量によって摂取エネルギーが練習で消費するエネルギーに対して不足する状態(低エネルギー可用性)が続くと、骨の代謝に影響し、疲労骨折を起こしやすくなるという点です。なお、この文献ではエリートクラスの漕手を対象とした調査で肋骨疲労骨折の発生率がおよそ1割程度と報告されていますが、対象や競技レベルが異なる大学ボート部の部員全体に同じ割合が当てはまるとは限らない点には注意してください。軽量級を目指して体重管理をする部員は、体重だけでなく食事量・エネルギー摂取量にも目を向けることが大切です。
栄養面から骨を強くする
疲労骨折の予防では、練習面だけでなく栄養面からのアプローチも重要だとされています。骨の材料になるカルシウムや、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、体づくりの土台となるたんぱく質を日々の食事で意識的に摂ることが、骨密度や骨の修復力を保つうえで基本になります。海外のローイング専門メディアでは、社会人(マスターズ)の漕手向けにカルシウム・ビタミンD・たんぱく質の目安量を示したうえで、トレーニング量は1週間あたり10%を超えて急激に増やさないこと、3〜4週間に一度は練習量を意図的に落とす「デロード週」を設けることを勧めています。対象は成人の社会人選手ですが、「量を急に増やしすぎない」「回復の週を計画的に組み込む」という考え方自体は、大学ボート部の練習計画にも参考になる視点です。
痛みが出たときの対応
脇腹や背中に練習中・呼吸時の痛みが出た場合、無理に漕ぎ続けると症状が悪化し、回復までの期間が長引きやすくなります。医療情報サイトでは、疲労骨折が疑われる場合の基本的な対応として、原因となった運動を一定期間休むこと、痛みの状態に応じて理学療法士などの専門家の評価を受けながら段階的に練習へ復帰することが紹介されています。部としても「痛みを我慢して漕ぐ」ことを美談にせず、症状が出た部員が早めに申告し、受診・休養の判断ができる雰囲気づくりが、結果的にチーム全体の稼働率を守ることにつながります。
まとめ
ボート部の肋骨疲労骨折は、パドリング動作の繰り返しに加えて、合宿や追い込み時期の急な練習量増加、フォームの偏り、軽量級部員のエネルギー不足などが重なって起こりやすい怪我です。練習量を段階的に増やすこと、体幹・肩甲骨まわりのエクササイズを取り入れること、栄養面を整えること、そして痛みが出たら早めに対応することが、予防の基本になります。強豪校がどのような年間スケジュールで活動しているかは大学一覧ページからも確認できるので、自分の部の練習計画を見直す際の参考にしてみてください。
出典
肋骨疲労骨折の一般的な原因・症状については大垣中央病院(肋骨疲労骨折)、疲労骨折全般の原因・予防の考え方についてはグリコ(疲労骨折とは?原因や予防方法について解説)を参照しました。ローイング競技における肋骨疲労骨折の発生率・多因子性・軽量級のリスクについては医学文献レビュー(Rib stress fractures in rowers)、練習条件と予防エクササイズについてはrow2k(Rib Stress Fractures: Prevention Exercises)、栄養摂取量とトレーニング量管理の目安についてはFaster Masters Rowing(How to Prevent Rib Stress Fractures in Masters Rowing)を参照しました。大会結果は公益社団法人日本ローイング協会(JARA)公式サイト(大会情報)の公表内容に基づいています。本記事は一般的な予防の考え方を紹介するものであり、症状がある場合は自己判断せず医療機関を受診してください。
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